好きな俳優の訃報を聞くたび、「ありがとうございました」と「(おこがましいかもしれないけど)お疲れさまでした」と「またスクリーンでお会いしましょう」という気持ち(カッコ内含む)をまとめて表す言葉があればいいのに、と思いつつ、だいたい黙っているという結果になる(それが納得いかないわけではない)。「追悼の言葉」が出てこない代わりに、その人について普段思っていることを書こうと思う。
小沢昭一って、色気のある人だと思う。特に『越後つついし親不知』では、あの(あの!)三國連太郎にも負けないぐらい、フェロモンがあった。全身に汗をかきながら出稼ぎの労働をするシーンにドキドキした。フェロモンの種類は違うけどね。ストレートではない、妙なフェロモン。「妙にセクシーだと思う芸能人は誰ですか」というアンケートがあったらいつでも「若い頃の小沢昭一」と答える準備ができてるんだけど、その機会にはまだ恵まれていない。 不穏さを内に飼うことができるというのかな。世の中の怪しさや汚さに対抗するんじゃなくて共に生きることができる、普通なんだけど普通じゃない人の顔。 そういった「スクリーンの小沢昭一」の思い出とは別に、小沢昭一さんとは前の仕事でたまたま、本当に一言ふた言、言葉を交わしたことがあって、その時のことって、思い出すたびにニコニコしてしまうんだよね。ざっくり言うと席にご案内するとか、その程度で、そこで何かスペシャルなやりとりがあったわけではないんだけど、その時の小沢さんの佇まいとか、喋る調子とか、身につけてらした服とかを、温かい気持ちとともに覚えている。 あの時、許されるならもっと色々、お世話をやきたかったなとか思ってしまう。当時の小沢さんはすでに70代半ばで、どちらかというと「老人的なかわいさ」の方が勝ってはいたけど、ついかまいたくなってしまうあの感じの理由は、やっぱり色気というものなんだろうな。 この写真、大好き。 「珍奇絶倫 小沢大写真館」(小沢昭一・著)より。 写真のキャプション:日活ロマンポルノ『濡れた欲情』主演の一条さんと、ラーメン屋に扮する小沢昭一。(セルフタイマー使用) 「(セルフタイマー使用)」……(笑)
by maru_na_ka
| 2012-12-10 22:03
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